原因・症状
「転んで手をついて手首に痛み」で生じることが多いです。
痛みが強い場合が多いですが、ズレないようなヒビだけですと「ちょっとねん挫したかな?」くらいの軽い痛みの場合もあります。
好発年齢
中高年の女性に多く、その場合は「転んで手をついただけ」で骨折します。
骨粗鬆症によって骨が弱くなっている事が一つの要因です。
その他には、男性でも生じます。
その場合は、スポーツ・転落など強い外力による骨折で、ズレも大きい場合が多いです。
治療
ギプスによる保存治療と、手術がありますが、患者さんの年齢・活動性や骨折のズレの大きさなどで、総合的に考える必要があります。
①ギプス
ズレが小さい場合はギプス治療です。
ズレがある程度大きくても、整復してズレが小さくできればギプス治療にします。
ギプスの期間は3~4週が多いです。
「ズレが小さい」の基準ですが、橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017では、レントゲンで背屈転位10度以内、短縮2mm以内、関節面のズレ2mm以内とされています。
少し専門的な内容ですので、ここでは詳細は述べませんので、興味ある方はガイドラインを参照してください。
また、上記のガイドライン指標は「青壮年以下」についてであり、(中)高齢者は指標がありません。(青壮年以下が何歳なのかの定義も曖昧ですが、40歳代中頃~60歳以下を示しているようです。)
というのも、橈骨遠位端骨折は骨癒合が良好な部位ですので、多くの骨折は癒合します(=骨折がくっつきます)。
ただ、ズレが大きすぎるとズレて骨癒合することになります。
そのズレて癒合した骨がどのくらい生活に支障をきたすかが「年齢・活動性」によって違うのです。(活動性の高い人は痛みを生じやすい。低い人は痛みを生じにくい。)
ですので、ガイドラインで指標を定めたのは「若い、活動性の高い人」たちであって、(中)高齢者の患者さんの場合はその人の活動性次第ということになります。
②手術
金属のプレートとスクリュー(掌側ロッキングプレート)で固定することが多いです。
上述のギプス治療の対象以外が手術という事にほぼなります。
上述のようにギプス治療の適応は一定のガイドラインがあるのですが、これを知らない整形外科医は結構多いです。
ガイドラインはあくまでも指標であり、絶対的なものではありませんが、それを知らずに「骨折したから手術」としている整形外科医が多い事は残念で仕方ありません。
手術費用<高額療養費支給制度を考慮しない計算です。その他諸費用(薬代など)が別途必要になると思います> 3割負担の方:約8万8千~10万6千円 <内訳> ・骨折観血的手術(前腕)の場合:15980点(=159,800円) *麻酔:全身麻酔の場合;閉鎖循環式全身麻酔5;6000点(=60,000円) 上肢伝達麻酔の場合;170点(=1,700円) #内固定材料価格 ・骨端用プレート:68,700円 ・ロッキングスクリュー:7,020円/本(約9本使用)(診療報酬点数2022年4月に基づいて計算)