ハイドロリリースは水の注射
ここ数年で急速に普及してきている手技です。
簡単に言いますと、「疼痛の原因となっている部位(筋膜)の周囲に注射をする」というものです。
そして、注射の液体は基本的には水(生理食塩水)という点が重要です(少量の麻酔薬を混ぜる場合もありますが)。
つまり、「薬の作用で痛みを抑えるのではなく、疼痛の原因となっている部位にピンポイントで水を注入し、疼痛の原因になっている癒着をはがす」というものです。
ピンポイントでという事が重要なので、超音波(エコー)で患部を描出しながら注射をします。
有効性・科学的根拠
整形外科の疾患ですと「腰痛」「肩痛」に対して効果を発揮します。
私も、ぎっくり腰の時に同僚にハイドロリリースを実施してもらいとても助かりました🙇♂️
また、テニス肘に対してとても有用であることは、以前投稿した通りです。
一方、腰痛・肩痛と同様に多い「膝痛」に関しては、あまり有用でない場合が多いと思います。
なぜなら、膝痛の原因の多くは軟骨が減ったことによるものなので、筋膜由来の痛みと異なるためです。
しかし、筋膜由来の膝痛の場合(少ないですが)には、有用です。
しかし、このハイドロリリースの機序は未だによくわかっていない部分も大きく、科学的根拠を重視する大病院では「うさんくさい治療」とみなされていたりします。
では、大病院でどのような治療をしているかと言えば「鎮痛剤の処方」だけだったりします。
皆さんも「腰のレントゲンは、ちょっと年齢的な変形があるけれど特に問題ないです。特別な治療も無いので、痛み止めの飲み薬と湿布を本日は処方します。お大事にしてください。」と言われて、帰宅した経験があるのではないでしょうか。
そのため、大病院よりもむしろ開業医の方が、取り入れている事が多いです。
注意点
しかし、ハイドロリリースも万能ではありません。
「痛ければすべてハイドロリリース」というのは危険です。
例えば、過去に描きました手根管症候群や肘部管症候群に対してです。
神経の通り道が狭くなって神経の症状が出現している部位に、液体を注入するというのは、さらに神経への圧迫を強くしうるからです。
このように物理的に狭くなっている部位で、且つ神経の障害の場合には慎重に考慮する必要があると思っています。
今後数年で、科学的データが蓄積され、どういう機序で疼痛緩和されるのか?どのような疾患に有効で、どのような疾患に無効なのか?が分かってくると思います。
痛みで困っている人たちが、できるだけ早くできるだけ多く痛みから解放されてほしいと思います。